お知らせ 動き出しはご本人から

【2019年度第3回現場実践】やっぱり「継続は力なり!」

投稿日:2019年11月22日 更新日:

今年度はより継続を求めて『ピリッ』とした緊張感をと、ルーティーンに研修会を迎えることで実践の継続を意識して取り組んで参りました。
今回で第3回目の「動き出しはご本人から」の介護技術現場実践ということで実施しております。
この時のことをちょっとだけ、みなさんにお伝えしたいと思います。 もう、芳生苑と言えば「動き出し」を取り組んでいる施設!と近隣施設のみなさんに分かってもらえているぐらいに定着しつつある取り組みになってきているでしょうか。
他施設の専門職の皆さんもお忙しい業務の中、介護技術の向上、ご自分の地域のご利用者様のためにより良い暮らしになればとご参加いただいております。
毎月、事例検討会議で日々の実践や前回の研修会の振り返りを行っております。 今までのご指導を吸収し、繰り返し実践してきたことを、研修会で日本医療大学 大堀具視先生に見て頂きたい一心で芳生苑職員は気持ちを一つにしてワンチームで今回の研修会に臨みました。何度、研修会を経験しても地に足がつかないくらいに緊張が走り、気持ちが高ぶります。

実践職員は皆、上手く実践ができるだろうか、この不安はどこからくるのだろうか、ご利用者様に職員が意図としている動きをして頂けるだろうかと様々な想いが駆け巡ります。
なんと言っても自分の介護を他者に見られるという、言葉にできないほどの感情が溢れでてきます。芳生苑の職員はまっすぐで想いの強い職員ばかりです。ご利用者様に対して、いつも、尊厳を持って関わっている証拠ですね。
人にみられることで自信のない介護はやらなくなり、自信のある関わり、介助だけが際立っていくものと大堀先生から教わり、まさに、この言葉が胸に響くようになってきた今日この頃であります。

それでは、居住棟ごとに実践の成果をご紹介したいと思います。

東棟現場実践ラウンド編

これまで研修会の開催ごとに盛り上がりを見せていた東西の職員ですが、ここにきて磨いてきた「動き出し」の技術に光が見えはじめてきました。
大勢の職員が見守る中で「ドキドキ」しながらも日々の取り組みを見ていただいております。ご利用者様の近くに行こうとする行動ですら、上手くいかず、あちこち自分(職員)の足をベッドの端にぶつけてしまい、とても緊張が伝わってきます。
いざ、ご利用者S様の起き上がり、座位、移乗の実践です。

まず芳生苑介護職員はご自分では寝返りできない方の褥瘡予防のためにクッションで安楽な姿勢をとっていただきたいところからクッションを使っておりますが体に触れているクッションを取るときでも、一つ一つの介助に対し声をかけ、ご理解をいただけているか反応を良く見て対応しておりました。
さすが、介護リーダー職員です。大堀先生から教わっている関わりを大切に尊厳がみられていた場面でした。

そこから、寝返りの動作へ移っていただくために、目線を起きる側に向けて頂くことを意識して行い、僅かな介助で左側に寝返りすることができました。動きを断片的に捉えるものではありませんが、ご利用者S様に伝わり意図する動作が行えた瞬間だったと思います。介護リーダーの表情に「ほっと」した表情が見られた一面です。
しかし、すぐさま次の動作の起き上がりに移ろうとしたとき、大堀先生から魔法の声がかかったのです。「横を向いたら、ストップ!」一秒でもご本人が感じられるようにとアドバイスをいただきました。
どの程度のペースで介助したら良いか、まだまだ、半信半疑のところを適切なご指導で、実践の中で感じとる、肌でつかむ確かな学びとなった場面となりました。

次に起き上がりの動作です。頭を起こそうとする動き出しが見られていたので頭を支えただけで、ほとんどご自分の力で起き上がれたように見えました。
ですが、これはご利用者様と職員が息を合わせた結果だと思います。二人で一つの動作を行う、お互いの動きを感じ合い、察し合う、もっとも「動き出し」を試されるポイントのところだったのではないかと思いますが、お見事です。
力が発揮できないところは支え、できそうなところで「ここから力、入りますか?」と優しく声をかけ、親切で丁寧な介助でご利用者S様の動きを上手く導くことができておりました。

ここで、少しブレイクタイム!
端座位になると床に足がべったり、着いていたので、「ベッドの高さを上げて下さい」とサポート役の職員にお願いするところを「ベッドを下げてください」と思わず言葉に出てしまい、大きな笑いが起きあがりました。
緊張で張りつめた空気が一遍し、周囲の職員の笑い声と温かい気持ちが伝わってきます。参加職員の皆さんは本当!思いやりのある職員ばかりです。施設全体の雰囲気が良く心温まるエピソードではないでしょうか。失敗もgood!!
脱線してしまいましたので気を取り直して本文に戻ります。

ご利用者S様は座位の姿勢を保とうと一生懸命です。顔をあげたりさげたりと、バランスを自らの力でとろうと頑張っています。 介護リーダーは「私はここにいます」と伝え、安心していただける声掛けをしておりましたが、なかなか、うまく保てません。そこで、手を柵に誘導し支えになるように実践を切り替え、これまた、うまくいきません。実践の焦りもピークに。何度も柵から離れる手をつかみやり直そうと介護職員は必死です。

ここで大堀先生の魔法の声が登場! 実践職員と入れ替わって大堀先生が直接、実践を見せて下さいました。 大堀先生は自分の胸を使い、ご利用者S様の頭が揺れ動くところを支えになるように実践されたのです。「頭がよく動く」「自分の身体だけで座れることを知ってもらうこと」「座っているんだという経験できる時間があってよい」とのアドバイスをいただきました。

周囲の職員もなるほど!と言わんばかりに深くうなずき、大堀先生の実践を吸収しようと真剣です。
そこで大堀先生のご指導は終わりません。ベッドの横に車椅子を設置し車椅子のアームサポートにご利用者S様の手を誘導し体の支えになるようにしたのです。 そしてこのような魔法の言葉をかけて下さいました。

胸でS様の頭を支えながら「自分の力で座位を保つから次の動作に繫がる」「うまくできていることをしっかり、伝えること」「普段やっていないことをやると、やれているか、やれていないか、分からない」とのアドバイスでした。さらにこのように声を掛けられています。
「まずいと思ったら、私を使ってください」「後ろは自分で何とかしてください」と伝え、身体が横に倒れそうにバランスが崩れ始めると「ご自分の手で支えていらっしゃるので、身体をよせてきていいんですよ」との言葉です

大堀先生は常にご利用者様の視点、立場での関わりに、まだまだ、教わることが多く、課題は多いものと感じた瞬間でした。

身体の硬直、つっぱりがある方に対して、いつも先生は仰います。
「私たちが作ってしまった緊張、つっぱりである」「それをなんとかしようと、手足を伸ばそうとする介助はおかしい」とのご指導がこの時も想い浮かびました。
バランスを少し崩れたぐらいですぐに、身体を直そうとする介助は体のつっぱりに繫がってしまう。ご自分で直していただける間をとることが大切であると。
ご利用者様を信じきること、心を通わすこと、その積み重ねが信頼関係となり、他者が行う介助に恐怖感を抱くことなく受け入れて下さるようになる。それこそがご利用者様主体の介護であることを改めて勉強させていただいた実践でした。
そうしているうちに座位が安定しはじめ、足に踏ん張りがきいてきて「さっ、立ちましょうか」なんていう気持ちになっていく。ご利用者様の気持ちの準備ができた間を見逃さず、体幹を支えながら移乗介助に入っておりました。

大堀先生からアドバイスがなくなるまでの道のりは遠いですが、的確なご指導の一つ一つは私たちの力、技術となり、心に届いております。本当にいつもありがとうございます。

他にも色々とアドバイスをいただいておりますが、止まらなくなるのでこのあたりで東棟の現場実践研修で行った一事例を終わりとします。介護リーダー職員を中心とした実践職員の皆さん、お疲れ様でした!  

 

 西棟現場実践ラウンド編

今回、西棟で実践したのはベテラン職員さんです。芳生苑で長くお勤めされておりますが、気持ちの優しい職員で、なかなか自分の介護に自信が持てずにいました。今回、実践する職員として選ばれてから、何をどうしたら良いか、どのように実践したら良いかベテラン職員であっても不安と緊張で頭の中がいっぱいです。

自分の介護に色々な思いがあるけれど、流れていく過ぎ去った日は取り戻せません。 大堀先生にお見せできるところまで技術を身につけないと、と思う責任感が芽生え、一から実践を始めようと決めてから、工夫を凝らしながら日常での実践を行ってきましたが、うまくいく日もあれば、そう、うまくいかなかったりと、うまくいかない事の方が多かったのかもしれません。

少しでも自分のステップアップにと先進施設の芦別慈恵園に出向き「動き出し」の実践を学びに行ったこともあります。準備は整ったけれど、どこか、不安はあります。

いよいよ、研修の日です。
前回の研修会から継続して行っているご利用者H様の実践です。
引き続き実践を継続しているH様の実践ですが、コミュニケーションをとることが難しく、その時々の気持ちで対応に苦慮することもあります。
今回は上手く起きていただけるでしょうか。 ご本人の前にいき、お顔をみると、ますます、緊張が増してきます。

「体調はどうですか」「起きて見ませんか」と声をかけると首を横にふられ、もう一度、チャレンジ!勇気を出して「起きて見ませんか」と心に届くように優しく声をかけると、ご自分で布団をはいでいただけました。
この動作は何気ない当たり前の動作ではあるのですが気持ちが伝わったことで、布団をはぐという行為に繋がったのです。ご利用者の意思は見えなくても、その動き出しに意思があると言います。
大堀先生は「表情が変わった、いつも布団をはぐことをやっているからだね」と仰いました。ご利用者さんの表情や動作をみて、瞬時に変化や能力に気づけるところが、さすが先生です。

その流れを崩さないように「起きてトイレに行きませんか」と声を掛けていきます。さらに柵に掴まって頂けるよう声を掛けました。スムーズに応じて下さります。 「できてますね」と声をかけ、できている事を認め、しっかり伝えるところなんかは日々の実践が活かされたところです。
その後も、調子よく手の動き、足の動き上体の動きを見事、引き出し端座位の状態に。

浅座りになって頂くために、声を掛けるとこれまた、自ら手を使ってお尻を前にずらしはじめます。 こんなにスムーズに動いてくださることがなく、介護者もびっくり!

車椅子を準備しベッド横に設置。「今度、車椅子へ移るの大丈夫?」と聞くと、自信がないせいなのか、首を横に振ってしまいます。しかしながらご自身で体をさらに前にずらし、移乗しようとする雰囲気がみられます。

「できてます」と細かく動作に対し伝えています。
先生からも「立ち上がりの動き出しになっている」と支えのタイミングを教えて下さいます。
足を踏ん張ろうとした瞬間、介護者は間に合わず、躊躇してしまい、先生から「いま、いま」との言葉がかかりました。

腰もあがってご本人の動き出しのタイミングで移乗できた後は「座り直しをしましょう」と話しかけると同時に、自ら座り直しを行ってくださいました。その姿を見た介護員は思わず涙がこぼれました。

そして「頑張ってくれて、ありがとう」 とH様に対して心からの感謝の言葉をお伝えしたとき、 H様が「あなたのおかげです」 そう言葉を返して下さったのです。

我慢していた緊張の糸がほぐれ、実践した介護職員、そしてご利用者H様にも涙が溢れ出てきました。会場にいた職員もみな、H様の言葉に驚き、嬉しさと、感動で胸が熱くなり、本当に心温まる実践になったと思います。

応援していた仲間も同じ気持ちで、安堵感でいっぱいの笑い声で会場を包みました。

先生からは「これぐらい出来るということが分かっただけでも素晴らしいこと」と実践の評価をいただき、実践した職員も見守っていた職員も「ご利用者様主体の介護」ができたことを実感できたのではないでしょうか。

                        

継続は力なり!!

この言葉の意味の深さを今、改めて感じました。一つひとつ積み重ね、続けてきたことが今回のような形で実を結ぶのです。ご利用者様が本当の意味で介助を受け入れて下さったこと、ご利用者様主体の介護が出来たことは、これを実践した介護職員、周囲にいた職員、一度体験した事は忘れないと思います。この体験の積み重ねが大切なんですね。これからも芳生苑職員は「動き出しはご本人から」の実践でご利用者様を笑顔にしていきます。



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