お知らせ 動き出しはご本人から

【2021年度第1回現場実践】生活の主体はご本人にあるのが当たり前という感覚 その1

投稿日:2021年6月5日 更新日:

5月24日(月)今年度最初の「動き出しはご本人から」介護技術研修会が始まりました。

平成29年に日本医療大学 大堀具視教授のご指導をいただいてからもう6年目になりました。私たちは、いつも先生から技術面だけではなく、人としてものすごく大切な事を教えていただいている気がします。

生活の主体はいつもご本人にあります。

動き出し介護実践を行う前、私たちは、その当たり前のことができず、介護優先、介助者本位のケアを行っていました。


ですが、実践を繰り返す中で、ご利用者の思いに寄り添い、いつの間にか自然と本人本位の考え方が身についてきました。

 

本人を認め尊重していくという考え方は、人材育成等にあっても十分に通ずることです。

誰しもが可能性を秘めている。できない事を責めるのではなく、信頼し出来ている事を認めていく。

人と人とのかかわりは動き出し介護実践と同じ、とても大切であたたかいものなのです。

時に人は、自分の思うようにならないと感情的になり相手を責めてしまいます。

相手を『出来ない人』と決めつけ、指示をするのではなく、その方への期待と信頼の意味を込めてお願いをし、その意をくんだ反応を期待していくべきと考えます。なかなか難しいことなのですが。

今年度私たちは、「仲間と楽しく、ご利用者様への感謝の気持ちをもって関わる」を目標にご利用者の動き出しを引き出す『コミュニケーション』を意識し実践することとしました。


私たちスタッフ同士も、相手を認め尊重し職員育成につなげ、このミッションを遂行していきたいと思います。

令和3年度介護技術研修会『動き出しはご本人から』の初回は、緊急事態宣言下となる前からオンラインでの開催を計画していました。


オンラインといえど、これはこれで、スタッフの緊張感は高まります。

 

時間となりZOOM画面に大堀先生が映るまで、口から心臓が飛び出そうだという声も。

いつも通り、午後から介護技術研修会が始まりました。

冬のラウンドから久しぶりとなる大堀先生との再会に、嬉しそうな職員の声が響いていました。

今回西棟ラウンドでは、認知症状が強く、意思疎通が困難な方で、なおかつADLの低下が顕著な全介助状態のご利用者2名について実践を行いました。

1事例目

基本動作の際に、こわばりや、つっぱり感が強く、廃用が進みそうな方の事例でした。

ご利用者はこれから何をされるのか不安で恐怖心が生まれ、身体のこわばりなどで伝えようとするといいます。これから自分がどう動くか、介助者からのアクションがあると行先が分かり無理な力が入らないようです。つまりは、関わり方、コミュニケーションです。


4月から実践を続けてきた担当スタッフの丁寧でゆっくりとした関わりに、ご利用者は安心し、支えがなくても端座位ができるようになっていました。

大堀先生からは、「僕らが今までどう変わってきたのかその答えを、ご利用者様は鏡になって見せてくれている。」と言われました。廃用で色々なことが出来なくなっても本人を信じて関わってみると、本人がきちんと、今出来ることを見せてくれるのだと。

反応が少ない方に対して介助者は、どうしても呼びかけが多くなり、関わる距離が近くなります。

ご利用者自身が、介助者の存在を理解できる距離までもう少し離れてみることが大切と言われました。私たちは動いて欲しい一心で、ついつい至近距離で関わってしまいますが、ソーシャルを保つことはここでも重要です。

時間が許す限り、座位の時間を確保し、足を床につけていただくとむくみの状態もよくわかるとのことでした。今回、偶然なのか、ご利用者の手が伸び車いすの座面に触れました。そのタイミングで移乗ができると良いとのことでした。私たちは本当に久しぶりにご利用者自身で動かれる姿を見ました。


そして今回介助のスピードが、ゆっくり丁寧でとても良かったのが何よりだったと褒めていただきました。

2事例目

2人目の方は、理解力そして筋力低下が顕著で、座位保持が難しく安定しない方でしたが、今できていることを維持し、これまでのように笑顔あふれる日常を過ごしていただきたいとする事例でした。


ラウンドでは、実践者とご利用者との信頼関係の強さ、その空気感に、周りのスタッフみんなが何とも言えない豊かで温かな気持になりました。

実践者は、なかなか目を開けてくれずコミュニケーションに苦労したと報告しました。

ですが、ゆっくり介助することで、自分の介助量が多かったことに気づけたと話していました。

私たちラウンド同行者は、スタッフがこんな風に自分で自分のことを分析していけるようになったその成長に驚きました。

今回、自ら実践者に名乗りを上げるスタッフが多く、とても積極的に自分たちのケアを見てほしいと思っているのだと感じました。6年前では到底考えられなかったことです。

 

 ご利用者は、反応が機敏でなくても、応答が返ってこなくても、伝わっていないわけではない。反応がないからと言ってあまりに声をかけすぎると利用者を追い詰めると先生は言います。


 返事が返ってこないからと言って話を聞いていないわけでも、全く理解していないわけでもない、人それぞれのスピード感があります。ゆっくりとその方のペースを尊重すると意外なほどの楽しみな答えが返ってきます。

介助者とつながることで、利用者の生活は始まっています。


だからこそ人と人との関わり、コミュニケーションは面白いのです。

 

東棟現場ラウンド編に続く>>

 

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