お知らせ 動き出しはご本人から

【2019年度第1回現場実践】待つことは我々目線。動き出しをどう引き出してあげられるかが大切

投稿日:2019年7月17日 更新日:

第1回現場実践 2019.5.27より

今年度最初の大堀具視先生の現場実践は、『動き出しはご本人から』の介護実践先進施設である芦別慈恵園と、近隣施設の作業療法士、町内の理学療法士をお迎えして取り組みました。
何年もこの実践を継続し、大堀先生の著書やDVDにも事例として掲載されるくらい、動きだしを自分たちのものとしてすすめてきている芦別慈恵園をお迎えするとあって、当日は、生活相談員も実践職員も期待と緊張でいっぱいでした。


そして、大堀先生のご指導は、半年ぶりでしたので、この期間どれだけ成長したかお見せしたかったのですが、冬期間インフルエンザの流行により予定していた施設内実践研修が中止になるなど、あまり良いご報告はできませんでした。
ですが、日常的な取り組みから、わずかでも動きだしを進めてきたこと、上手くいかずに悩んでいることなどをご指導いただきました。

東棟現場ラウンド編

今回東棟ラウンドでは、体幹のバランス保持、歩行筋力の強化、起き上がりなどを中心に対象ご利用者様4人について実践を行いました。

今年度最初の実践は、新人職員による「姿勢が安定しない方の姿勢保持」を目標としてすすめました。認知症状が強く短期記憶が乏しいかたを、実践者は根気よく丁寧に声をかけ、ご本人の動きをみて必要なところだけ介助しました。
実践のコミュニケーションは、教科書どおりにはいかないことがたくさんありますが、入職2ヶ月の職員は自分なりにご利用者様との関係性を構築し、今季最初の『動きだしペア』としては、緊張あり、笑いありで大変良い雰囲気でした。

そしてリーダー職により、手引き歩行による下肢筋力アップを目指す方と、認知症状の進行により状態低下がある方の移乗動作を行いました。
普段は、楽しく実践していますが、ギャラリーの多さに、実践者もご利用者様も緊張気味でした。


かかわりが大変上手なリーダー職といえども、ご利用者様は声かけがいつもと違うと感じたのか、一向に動き出してくださらず焦ってしまいました。身体を使い真似をして伝えたり、歌を歌ったりと汗だくで、時間はかかりましたが、何とか実践者を見てくれて、実際には動くことはできなかったのですが、自分で動こうとする気持ちを感じることができました。

最後に、入所時に寝たきり状態であったご利用者様が、動きだしという関わりの中、車椅子で自走ができるまでとなった事例を見て頂くこととしました。
この時の実践については、7月4日の全道老人福祉施設協議会研究発表で報告していますので、その様子は別途掲載したいと思います。

西棟現場ラウンド編

西棟ラウンドでは、身体機能の維持と座位保持、安定した歩行、歩行筋力の強化、起き上がりを4人のご利用者様と、その他、車椅子上での安定した座位について1名追加で実践を行いました。
最初は、動きだし実践を始めた時から、ご指導を受けている方の事例で、身体の拘縮が強くさらに胃ろうのため臥床やティルト式の車椅子での生活が多い方の実践です。


端座位になることで目線が変わり、毎日訪問されるご家族と目を合わされ大変表情が良くなります。
しかし、体調の変動は顕著で、入退院を繰り返しそのたびごとに変化する身体状況を心配していました。
ですが、今回動き出し実践では、ご自分で頭を上げたり、目線を向けたりと、「私は変わってはいませんよ。」とばかりアピールしてくださいました。
先生は、声かけが良い、状態が変わらないことが一番であることを評価してくださいました。ここまで拘縮が進むと状態を維持するのも動きだしのひとつであると先生は言います。
このご利用様は、言葉での返答が難しいため、本当は今どうしたいのかその気持ちがが分からないことをいつも申し訳なく感じていました。
ですが、「動き出しという大変な動作をするのだから、少しでも良かったと感じてもらえるよう実践を続けていけば良いのでは」という先生のアドバイスに気持ちが救われました。

その他、歩行に関する実践を2人行いましたが、2人とも笑顔と頑張りが素敵で、職員もその笑顔に助けられていました。
そのうちのお一人は、動く能力はあるのに入所当初、身体の痛みを訴えて一つも動いてくれない方でした。
結局その時点では、私たちが信頼されていなかったのだということなのでしょうか。
今回、ご自分で「やってみるかな」と、どんどん動きだし、恐ろしいと言っていた手引き歩行も出来、楽しく実践をしてくださるご本人をはじめラウンド参加者全員の笑い声が西棟全体にあふれ、大変にぎやかで楽しいひとときとなりました。
入所当初は、偏食、入浴拒否、介護拒否があった方でしたが、動き出しを主とした職員との日々の関わりにより、雪が解けるように本人の生活意欲が引き出され、色々出来ることが増えました。


まさか、こんなふうに皆さんと笑いあえる日が来るとは誰も思いませんでした。
動き出しで一番大切なのは関わりです。安心してその能力を発揮できるよう、ご利用者様の動き出しに応じ、動きを尊重することが大切であるということをあらためて実感しました。
そして、今回、コミュニケーションがとても難しい方の動きだしをチャレンジしました。
普段から笑顔を見せることのないかたが、大勢の人の前で動き出しを見せてくださるのか、心配なところでした。
気持ちにムラがある方なので、上手く引き出すことが最大の課題でした。
終始うつむき加減のご利用者様との、静かな熱い駆け引きが始まりました。


足の踏ん張りがあるので「できる」と感じた実践者は、自信がつくように優しく声かけます。
身体をご自分で起こしていただくところまででしたが、ご本人の動きは充分見られました。
手も足も力がある方なので、もっと信頼関係を構築して、介護員ひとりで介助が出来ることを目標にこれからも継続していきたいと思いました。

最後に、大堀先生から、次のように講評をいただきました。
「皆さんは、昨日、今日の事ではなく、継続したかかわりをしているからこそ、問いかけも自然で、本人目線の介護が進められていると感じた。施設内が大変明るく活気がある。
今後は、一歩先の声かけをするように心がけてほしい。
動作の一部を切り取った声かけになるから「こっちを向いてください」となる。
次の動作から、最終的にどの方向へ向くのか、ご本人が想像できるようなもう一歩先の声かけをできるようになるといいのです。
動き出すというのは、我々目線であって、ご本人の動き出しをどう引き出すか、どういう存在に我々がなるかです。動きはなくても、その雰囲気があればそれを認めて、ご本人の気持ちをくみ取る声かけをして褒めてあげてください。
動き出しを3年続けてきて見えてきたことが、沢山あります。これからも継続していきましょう。」
と、ますますモチベーションがあがる魔法の言葉をいただきました。
先生ありがとうございました。次の研修会は7月29日(月)です。日々の積み重ねをまたご指導していただきたいと思います。またよろしくお願いいたします。

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