ご利用者の能力を認め引き出すための『動き出し』介護技術実践
今回も大堀先生にしっかり見て頂こうと、職員は日頃の実践に応用を加えて、なおかつ聞きたい事もぎゅうぎゅう詰で準備万端、先生を待ちわびて研修当日となりました。
今回は、『ご利用者様が生活をより楽しめるケアを提供していく!』、という大きなテーマのもと職員自ら考え進めてきた内容実践についてご指導いただきました。
当日は、今回も他施設の参加をいただき、ともに地域のケア向上を図る取組を行っています。
東棟現場実践の内容
これまで実践指導を継続しているかたの他に、筋力低下が進み食事の自力摂取が困難になってきている方へのアプローチ、脳血管障害からの退院後の体力向上、経管栄養者のパークゴルフ実施を目ざした筋力アップなどについて、普段の実践からさらなる効果的な取り組みについてご指導いただきました。
西棟現場実践の内容
以前から経管栄養で寝たきり状態であっても、できることを維持していただけるよう座位保持についてのご指導、在宅酸素施行のかたの歩行希望を実現できるよう日々の実践についてご指導いただきました。
その他、加齢によりご本人本位の動き出しが困難となったかたが、ご本人が望むような日常の行動ができるよう筋力アップについてご指導いただきました。
東棟ラウンド編
『自分は、今日だって明日だって変わっていない』
認知症状が強くなかなか伝わらないご利用者様を継続して春から実践し、指導を受けていますが、今回はかかわり方が大変良かったと言われました。
当日担当スタッフは、「○○さん私を見て!」と声をかけ、ご本人が目を開けてくれたことに対して「起きてくれてありがとうございます。」と感謝をしたり、右側からアプローチをしようとしたときにご本人が左から動きだすことがあっても「ああ、そっちが良いのですね。」と受け入れたりと、特別な事ではなく自然に対応しました。
先生からは、「きっと、その声かけは、いつも通りのことなのでしょうね。きちんと目を見て話していますね。」と言われました。
介護者自身がご利用者の目にしっかり入ってなければ、どんなことをしてもこの方は動きません。
私たちは、『今日は、調子が良いとか、昨日はどうだとか』、とかく生半可な知識があるだけにそのようなことを言いがちですが、それは動けないことを本人のせいにしてしまうことだと先生はおっしゃいます。
普段の流れの中でできないことを言われたら、自分ならどうでしょう?
「俺は、昨日だって、今日だって何にも変わっていないぞ」と本人は思っているはず。
だからこそ、今日ありのままを受け止めて関わりを深めていくのです。
『関わりを持ったら持ったようにご利用者様は自分自身で動く』
病気で一度寝たきりを経験したかたは、なかなか自分で動きだせなくなります。
私たちは、入院によるADL低下のかたをスライドボード等の補助用具で移乗介助を行うことがあります。ですが、症状が軽快しご自分で動き始めようとするタイミングを逃しそのまま用具を継続使用していると、自分は動かなくても良いのだと身体が覚えてしまうといいます。 廃用が進んでしまう原因はこのようなところにもあるのかもしれません。用具は、効果的に利用するようにしたいと思います。
私たちの関わりは、本人を通して感じられます。関わりを持ったら持ったようにご利用者様は自分自身で動いてくれます。要するに介護する私たち次第なのです。
今回は、今年度最終の指導ということで、これまで職員全員で頑張って実践を続けてきたものをたっぷり見ていただきました。ご利用者が楽しんで続けられるものを考え、成果が現れると私たちも頑張れます。
これからも色々なアイディアを出して取り組みが維持できるよう小さなことをこつこつと職員も動き出していきます。
西棟ラウンド編
『実践の経験が新たなご利用者様を迎えるための大きな財産』
動き出しを初めてご指導いただいた時から、臥床が長い経管栄養のかたを端座位に、という実践を継続してきました。今回は、ご家族が見学されている中、再度ご指導いただきました。
端座位になることで、普段目を閉じていることが多いかたでもパッチリ目を開いてくださいます。
スタッフは、「普段の介助の中では、ご利用者様の身体がこわばってしまい、起き上がりの際にご本人の動き出しに合わせられない」、「端座位になったときベッドから転落するのではないかと心配になる」などの質問がありました。
重度ご利用者様の中でも大変介助量が多いかたで、いつもスタッフはよく頑張って実践を継続していると褒めていただきました。
傾きは本人の危険と考えるか、安全の中での経験と考えるかです。
ご本人の重心をよく考え、手で支えるだけではなく、テーブル設置などで前に行かないようにご自分の力を感じていただきながら端座位をキープしていくようにと指導をいただきました。
先生は、この方の病状から考えても、劇的に良くなることは考えにくいけれど、ここまで維持できていることを大切に、今後どれだけ芳生苑で体調良く過ごしていただけるかが重要だとおっしゃいました。そして、この実践が、「新たな重度のかたを迎えるにあたっての経験として素晴らしい財産になりますよ」とも言ってくださいました。
『原因のおおもとは、私たちのケアの自信の無さ』
最後に、入所時から体調が回復し、少しずつご自分で動けるようになり、ヒヤッとする場面が増えているかたについて実践しました。
先生曰く、利用者ご本人が「やってみるかな」と躊躇しないかたは、自分の動きに自信があるかただそうです。
出来る出来ないは別にして、認めてあげることで出来ることが本人次第で増えていき、意欲が引き出され、本人は出来そうなことを探します。
介護者が、「ちょっと、待って、待って」と言って待ってもらえない時期というのは、介護者自身の不安を見透かし、「結構です」という感じで自分勝手に動く状況にあるからといいます。
原因のおおもとは、私たちのケアの自信の無さからきているそうです。
結局、ヒャッとする原因は私たちにあったのです。信頼関係をもちご本人が望む生活を提供することで安心し、ヒヤリはっとが少なくなるのではないかと思います。
『継続は力なり。すべての仕事につながっている』
動き出しの介護実践研修を2年間継続してきて、職員は少しずつ変化を見せています。
情報共有がスムーズにいかなかったり同じ失敗をしてしまったりと、上手くいかないこともありますが、必ず振り返り次への糧にしていくなど、自らの力で色々な自信に変えてきています。
このような職員の力が、今後、施設整備やケアの転換などを検討していくにあたり、基盤となっていくのではないかと思います。
実践の継続は、何より難しいことはこれまでも実感してきましたが、次年度、より成熟した動きだしを行うために、今後もご利用者様と向き合い、関わりあってご本人本位のケアをすすめていきます。大堀先生と私たちの動き出しの魔法は、まだまだ続きます!!
実践内容のすべては、来年1月の芳生苑・健楽苑『頑張った大賞』で発表します。
ホームページでも公開していきたいと思います。